アルゴリズム開示に関し
これまでも何度か弊社電子割符・秘密分散技術の詳細に関しお問い合わせをいただくことがありましたので、都度個別に回答したり、その一部を弊社WEB等で情報開示しておりましたが、そのお問い合わせが増加しておりますので、弊社の現状スタンスとそこに至る1999年の初出荷から今日に至る経緯概要を含めお知らせします。
基本的な処理概念等は、次世代電子商取引推進協議会(ECom)(現一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)様が公開している報告書、
「ECにおける情報セキュリティに関する活動報告書2009」
のTF1「秘密分散技術利活用検討における活動成果報告書2009(TF1)」に記載されております。当時のこの報告書は、初の秘密分散技術のガイドラインとも言えるものです。
http://www.jipdec.or.jp/archives/ecom/results/h21seika/H21results-10.pdf
その他の過去の情報開示は、お手数ですが過去の弊社WEB NEWSや、他社発信のWEB記事等をご参照下さい。
そもそも弊社はアルゴリズム開示を前提として技術開発を行い、当該分野の著名な有識者様による外部評価もお願いし、その報告やアドバイスを反映させ電子割符・秘密分散技術の高度化を行なって参りました。それが、市場に供給する技術の最高の証明になると考えていたからです。
しかし、この研究開発成果を市場に供給し始める前後で、弊社は情報政策を担う官庁様と協議を行ないました。(主に内閣官房情報セキュリティセンター様と当時の通産省様、現在は経済産業省様)その内容は、明確な法的規制の無い当該技術の市場供給に関する懸念事項の確認でした。
弊社が懸念した部分は、当該技術で割符化した際に、原理的に高度な秘匿性を持ってしまう事実があるからです。つまり、利用の仕方によっては高度な社会安全保障上の懸念材料となる可能性も否定できないと考えたのです。(当時テロ事件等もありました)
これは、社内で初期プロトモデルをテストした際の率直な感想でした。
例えば、現在通常一般が利用できる暗号技術は一定の規制範囲内のもので、社会が(国際社会を含め、社会安全保障上も)容認したレベルです。
一方、電子割符・秘密分散技術は原理的に既存暗合技術とは異なる新たな技術として市場に供給されるという背景を持つ為、早期に情報政策を担う官庁様との協議が必要と考え複数回の協議を行いました。上記のような懸念事項に気付いた以上、確認せずに無責任に市場に技術供給することはできません。
官庁様との協議の結果要旨:
- 弊社の電子割符・秘密分散技術は社会一般で言うところの暗号とは一線を画すものである。
- 弊社の電子割符・秘密分散技術は、理論ではなく、あくまで技術であり、新たな情報運用管理手法を産み出す基礎技術である。
- 既存暗合との併用・組み合わせ利用も可能であり、暗合と電子割符・秘密分散技術は相互補完することができる関係。
- 現状明確な法的規制はない。(強いて言うならばキャッチオール等)
- 現状の市場供給方針は、当該技術を開発した供給者(弊社)の考え方次第。
- 詳細なアルゴリズム開示はいつでもできる。
- 詳細なアルゴリズム開示の結果、万が一の事件等が発生した場合の被害は甚大と考えられる。
- 上記7の事件の収拾は容易ではない。内容によっては国際的政治課題になる可能性もある。
- 上記7、8の補償や被害者救済の手段が無い。
- 上記7,8,9という事態になれば、政府として規制をすることも想定され、当該分野の研究や成果発表等にも影響が出るであろう。
- 革新的な日本発祥の技術として普及の可能性がある。
- 抜き身の刀(むき出しの技術)として、広く市場に供給することは上記懸念を払拭できないので、当面の間は、当該技術の特殊性を理解したライセンス先にのみライセンスする。
- 技術供給者としては、そのライセンス先には、極力実際に利用するアプリケーションプログラム化して市場に供給させる。
- 健全な当該技術利用モデルを先ずは国内で普及させ、国際展開を推進する。
- 研究開発や市場啓発活動に関し、連絡を継続して取り合う。
- 当該技術の日本発世界標準化を目指し、市場啓発活動等を継続する。
といった方向性で落ち着き、現在も不定期ですが経過連絡や確認等を継続しております。このような経緯から弊社は、弊社の電子割符・秘密分散技術の外部評価報告等の技術詳細資料は存在しますが、社会安全保障上の観点から現時点では敢えてその公開を控えております。
並行し、特に東日本大震災以降明確に顕在化した重要な電子情報の保全・BCP問題や、個人情報保護、営業機密情報等への利活用に関しては、健全な利用モデルの筆頭に挙げられ、そのようなモデル自体や、その事例を元にした当該技術の標準化に関する意見交換も行なっております。
勿論、上記のような事業活動を制限する形となる意見交換の結果など無視して商売を優先することはできますが、それは自らも社会(世界)の一員である認識が欠如した行動であり、且つ弊社の創業理念にも反する行為ですので弊社としては行なえません。よって弊社がこれまで正式にライセンスしてきた先様は、社会全体も見据えた広範囲なセキュリティの意味を理解してくださった上で弊社と契約した方々です。
参考までですが、最近弊社のような新技術に少し似たNEWSがありました。
広域伝染病に関する遺伝子の研究成果に関し、一時国際社会からその成果公表を差し控えるよう要請があったことは記憶に新しいと存じます。情報開示することは、その条件が整えばいつでもできるのです。新たな技術革新や発見は、新たな脅威を産み出す可能性もあります。まさに盾と矛。矛盾が折り重なり、微妙な調和をしているのが現実社会です。なので容易なことではありませんが、その矛盾だらけの社会を貫く健全な新技術利用方法の明確化が必要なのです。
もっと身近な類似事例も多数あります。
例えば自動車がそうです。私も過去、自らの不注意で自動車事故で大きな怪我をしたことがあります。自動車が世に普及し始め、次第に不幸な交通事故が多発するようになりましたが、その際に社会はその自動車自体を排除せず、その危険性と社会的有用性を推し量ったうえで、社会として受容できる環境整備を行い今日に至りました。これは、潜在的危険性を顕在化させないような努力や工夫と同時に、その危険が顕在化(事故発生)した場合の補償や被害者救済に関する社会的方針や手段が具現化され、標準化や法制化が実現し、運用されてきていることを指します。上記の事故で死の淵を彷徨った私の実感としては、その環境整備はまだまだ不十分と感じますが、現代社会は自動車自体の存在等を抜きに語れない現実があります。
現在そして今後の社会も、IT抜きの状況には容易に戻ることはできません。
現在推進している電子割符・秘密分散技術標準化の活動は、まさに新技術が社会に受容されていく為の環境整備の一環とも言えます。健全にITの新技術を利用する為には、そこで利用される基礎技術に関する詳細なアルゴリズム議論よりも、実際にはその新技術はどのような機能・特性を備えているべきか。といった基本的概念定義や、そのような新たな基礎技術をどのようにすれば社会に有用な仕組みとして、継続的に市場供給することができ、利用者は利用できるのか。といった健全な利活用や供給の在り方の具体化。また必要な環境整備は何で、どうすればそのような環境整備は実現できるのか。といった受容する社会側の準備事項の明確化と具体化。更に、日本として当該技術や派生する商品・サービスを国際社会に普及させるには、何が必要か。といった日本発の世界標準化に向けた戦略的な施策が最重要課題です。
新たな技術が市場に普及するとき、市場の常識は非常識に一変します。
弊社は、今後も当該技術を生み出した企業として、責任ある市場普及活動を行なって参ります。健全な当該技術利用モデルをライセンス先様や、これまでの弊社方針等にご賛同くださる多くの皆様と実現し、その事例をベースとして日本発の世界標準化を目指します。
本件に関し、ご質問等ありましたら、infoアットマークgfi.co.jp まで、お問い合わせ下さい。